オイコスとは「居住」の意

谷中霊園近く
谷中(台東区)、根津(文京区)、千駄木 (文京区)、通称「谷根千」は、東京の北東部、台東・文京・荒川の3区が境を接するところ。谷中へはJR日暮里駅(荒川区)、根津、千駄木へは営団千代田線の同名の駅を利用すると便利である。江戸時代、谷中は寺町として栄えたことはよく知られている。時代は下って、第2次世界大戦中、米軍の空襲が東京の下町を廃墟と化したのだが、この地域は奇跡的に焼失を免れ、寺院、木造の長屋風住宅、路地などが残り、今日下町情緒溢れる観光地として親しまれている。

オギュスタン・ベルク氏はその思想を端的にあらわすエクメーネ(風土)という概念の語源をギリシア語のoikosに求めている。oikosはエコロジー、エコノミーの語源でもあるという。
谷・根・千を訪れた人は、ベルク氏が展開するエクメーネを実感することができるだろう。その理由をベルク氏の記述に従い解釈するならば、谷・根・千は生態的次元と象徴的次元が同時に属する〈生態象徴的次元〉を内包した場所だからである。この地の町並み、住宅、暮らしなどから、物質的であると同時に意味論的な占有を感じるに違いない。
オギュスタン・ベルク氏はまた、ヘルダーリンの「人間は詩的に住まう(dichtersch wohnt der Menssh)」を引用し人間の居住の尺度にある倫理性に着目している。ベルク氏は従来の環境倫理を越えた人間の存在契機を風土性(通態性と通時性)という概念で展開しているのだが、それを説明するのは当サイトの趣旨ではない。
私はこの東京において、「人間は詩的に住まう」という一節が似合うところを、谷・根・千以外に知らない。当サイトがその雰囲気をいささかでも伝えることができるならば、それにまさる喜びはない。
(撮影者/tram)
谷根千写真帳
〔参考文献〕
『地球と存在の哲学』ほか(オギュスタン・ベルク著)
『ケルトと日本』(鶴岡真弓・鎌田東二編著)
『日本の地霊(ゲニウス・ロキ)』(鈴木博之著)
『日本の呪い』(小松和彦著)
『海上の道』(柳田国男著)
『表徴の帝国』(ロラン・バルト著)
『日本の伝統』(岡本太郎著)




谷中の民家


















路地。祠があり、路地を抜けたところには地蔵もある。この界隈は私がもっとも好きな場所/谷中三崎坂



